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傷害致死と殺人の違いは「殺意」? 認定の基準と罪名によって変わること

2023年03月22日
  • 暴力事件
  • 傷害致死
  • 殺人
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傷害致死と殺人の違いは「殺意」? 認定の基準と罪名によって変わること

平成29年7月、宮崎県延岡市内に住む男が殺人未遂の容疑で逮捕されました。日本刀で義理の息子を切りつけ、けがをさせたため逮捕に至りましたが、男は「殺すつもりはなかった」と容疑を否認していたとのことです。

この事件のように、殺人事件として逮捕された容疑者が「殺すつもりはなかった」と否認するケースはめずらしくありません。もし、実際に殺すつもりはなかったが行き過ぎた暴行などで相手を死に至らしめてしまった場合は、殺人罪ではなく「傷害致死罪」に問われる可能性があるのです。

本コラムでは、「傷害致死罪」と「殺人罪」の違いや両者を区別するポイントについて、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスの弁護士が解説します。

1、「傷害致死罪」と「殺人罪」の根拠や要件

まずは、「傷害致死罪」と「殺人罪」がそれぞれどのような犯罪であるかについて、解説します。

  1. (1)傷害致死罪とは

    傷害致死罪は刑法第205条に規定されている犯罪です。
    「身体を傷害し、よって人を死亡させた」場合に成立するものであり、同第204条の「傷害罪」よりも重大である死亡結果を発生させたときに適用されます。
    傷害罪と傷害致死罪のように、同じ行為であっても意図せず重大な結果が生じた場合に、より刑罰が重い犯罪として罰することは、「結果的加重犯」といいます。

    傷害致死罪や傷害罪における「傷害」とは、暴力などの不法な有形力の行使によって、人の生理的機能に障害を与える、または健康状態を不良にすることを意味します
    具体的には、けがを負わせる、病気に感染させたり中毒症状を起こさせたりした場合には、傷害結果が生じたといえます。

    傷害致死罪は、相手にけがを負わせたり病気などの不健康な状態に陥らせたりして傷害結果を負わせ、それにより、相手が死亡した場合に成立します。

    たとえば、争いの際に相手を殴ってけがさせれば傷害罪が成立し、その際に意図せず相手が倒れて頭部を強く殴ってしまい脳挫傷などで死に至らせた場合には、傷害と死亡の間に直接的な因果関係があるため、傷害致死罪が成立する可能性が高いでしょう。
    一方で、けがの治療を受けるために入院していたところ、病院で火事が起きて焼死してしまったという場合には、傷害と死亡の間に因果関係は認められません。
    このような場合には、傷害致死罪ではなく傷害罪の成立にとどまるのです。

    なお、不注意などの過失が原因で意図せず相手を死に至らしめてしまった場合は、刑法第210条の「過失致死罪」が適用されます。

  2. (2)殺人罪とは

    「人を殺した者」は、刑法第199条の殺人罪によって罰せられます。
    故意の行為によって他人の生命を奪う犯罪で、数多い犯罪のなかでも、特に厳しい刑罰が規定されています。
    また、同法第203条によって未遂も罰する旨が定められているので、たとえ相手が死亡しなかった場合でも厳しい刑罰は避けられないでしょう

2、傷害致死罪と殺人罪を区別するポイント

たとえ「人の死亡」という結果において同じでも、傷害致死罪が適用された場合には、刑罰は殺人罪よりも軽くなります。

以下では、傷害致死罪と殺人罪がどのように区別されるのかについて、解説します。

  1. (1)最大のポイントは「殺意」の有無

    傷害致死罪と殺人罪を区別する最大のポイントは「殺意」があったかどうかです
    殺人罪は、「殺意をもって他人を殺(あや)めた場合」に成立します。
    一方で、傷害致死罪では、殺意の有無に関わらず傷害の結果として人の死亡が生じた場合に成立します。

    殺意とは、自らの行為によって人の死亡という結果が生じることを認識・容認する意思のことです
    積極的に「相手を殺そう」と決意することはもちろんですが、積極的に殺す意思まではなくても「相手が死んでしまっても構わない」という意思があれば、殺意が認定されます。
    ある結果の発生を意図していなくても、自らの行為によって結果が発生することを予見しながらあえてその行為に及ぶことを、「未必の故意」といいます。

  2. (2)殺意を認定する要素

    殺意は人の内心に存在する意思や感情であるため、その存在を客観的に証明するのは困難です。

    そこで、一般的に、捜査機関は「殺すつもりだった」という明確な意思を「自白」というかたちで引き出そうとします。
    しかし、日本国憲法第38条3項は「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科せられない」と明記しています。
    つまり、自白のみでは有罪とはならないため、そのほかのさまざまな証拠から殺意の認定が行われるのです

    殺意の認定においては、以下のような要素が重視されます。

    • 凶器の種類
    • 凶器の用法
    • 創傷の部位
    • 創傷の程度
    • 犯行の動機
    • 犯行後の救護措置の有無


    たとえば、包丁のように本来は人を殺傷する用具ではない物であっても、これを刺す・切り付けるといった使い方をすれば、人を殺めてしまうことは容易に予見できるでしょう。
    また、心臓・頸部(けいぶ)といった身体のなかでも重要な部分に攻撃を加えていたという事実から、生命を奪う意図があったことが証明される場合もあります。
    さらに、事件の前に金銭トラブルがあったなど殺害の動機となる出来事が存在していたことや、事件後に救急隊の出動を要請しなかったといった具体的な状況からも、殺意が認定される証拠となる可能性があるのです。

3、傷害致死罪と殺人罪の刑罰

まったく同じ結果が起きたとしても、殺意があったかどうかで、傷害致死罪と殺人罪が区別されます。
受ける刑罰には格段の差が生じるので、加害者にとっては、どちらが適用されるのは非常に重大な問題だといえるでしょう

  1. (1)傷害致死罪の刑罰

    傷害致死罪の刑罰は「3年以上の有期懲役」です。
    具体的に述べると、懲役刑は1カ月以上20年以下の範囲で下されますが、傷害致死罪の刑罰の下限は3年なので、原則として3年以上20年以下の範囲で懲役が言い渡されることになります。

    なお、3年を超えない懲役は、一定期間に限って刑の執行を猶予する「執行猶予」制度の対象です。
    傷害致死罪に問われても、最下限の刑罰が言い渡された場合には、執行猶予付きの判決が言い渡される可能性があるのです。

  2. (2)殺人罪の刑罰

    殺人罪の刑罰は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。
    最高刑である死刑が予定されているほか、期限の定めがない無期懲役、あるいは最低でも5年から20年の範囲で懲役が言い渡さることになるのです。
    5年の懲役が言い渡された場合には、執行猶予がつくことはありません。
    減刑がされない場合には、実刑が下されることになります。

4、人を死亡させてしまったとき、弁護士に相談すべき理由

「争いの際に行き過ぎた行為があって、相手を死亡させてしまった」など、もしご自身やご家族が人を死亡させてしまった場合は、直ちに弁護士に相談してください。

  1. (1)厳しい刑罰の回避が期待できるから

    傷害致死罪と殺人罪のどちらが適用されるのかによって、刑罰の重さは格段に変わります。
    殺人罪が適用されて有罪判決を言い渡された場合は必ず刑務所に収監されてしまうので、実際に「相手を殺そう」という意図がなかったのであれば、傷害致死罪の適用を主張するべきです。
    しかし、警察・検察官といった捜査機関には、積極的に殺人罪を適用しようとする傾向があります。
    厳しい取り調べが展開されて、自白を迫られるおそれもあるのです。

    弁護士にサポートを依頼すれば、傷害致死罪の適用を主張するための、客観的な証拠収集が期待できます
    また、不当な取り調べによる自白の強要への対抗策として、黙秘権の行使や「取り調べノート」による記録など、ご自身の権利を守るための具体的なアドバイスが得られるでしょう。

  2. (2)早期の身柄釈放が期待できるから

    傷害致死罪や殺人罪の容疑で逮捕されてしまうと、逮捕から起訴までの間に最長で23日間にわたる身柄拘束を受けます。
    身柄拘束を受けている間は、自宅へ帰ることも会社に行くことも許されません。

    社会的な悪影響を抑えるためには、早期の身柄釈放を実現する必要があります。
    遺族との示談交渉を進めて賠償を尽くす、「家族による監督が期待できるため勾留の必要はない」という主張を展開するなどの弁護活動が行われることで、早期の釈放が期待できるのです

5、まとめ

暴力などによって他人を傷害して、その結果として相手を死亡させてしまうと「傷害致死罪」に問われます。
「人の死亡」という結果においては殺人罪と近い存在ですが、殺意がないため、殺人罪よりも軽い刑罰が規定されています。

傷害致死罪が適用されるべき事件でも、捜査機関が殺人罪の成立を主張するケースはめずらしくありません。
自白を引き出そうとして厳しい取り調べが展開するおそれも高く、強引な詰問や誘導的な質問によって殺意を認めたような供述調書が作成されてしまう事態も想定されるのです。

人を死亡させてしまう事件を起こしてしまい、殺人罪の適用による厳しい刑罰を回避したいと考えるなら、弁護士のサポートは不可欠です
宮崎県の方は、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスにまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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