侵入して窃盗したときに問われる罪とは? 刑罰の重さと逮捕の可能性
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不法な侵入を伴う窃盗は「侵入窃盗」となります。宮崎県警察が公表している「令和2年犯罪統計」によると、宮崎県内では令和2年中に334件の侵入窃盗が認知され、85.6%にあたる286件が検挙に至っています。宮崎県下における窃盗犯全体の検挙率が47.3%であることを考えると、侵入窃盗の検挙率は格段に高く、刑罰を受けるおそれが強いといえるでしょう。
本コラムでは「侵入窃盗」をテーマに、通常の窃盗事件との違いや有罪となった場合の刑罰、逮捕されたあとの刑事手続きの流れなどを、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスの弁護士が解説します。
1、「侵入窃盗」とは
まずは「侵入窃盗」とはどのような類型であるのかを解説しましょう。
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(1)侵入窃盗の定義
他人の財物を盗む行為は、刑法第235条の「窃盗罪」に該当する犯罪です。
窃盗を、その態様に応じて「侵入窃盗」と「非侵入窃盗」に分類することがあります。
ここでは、住居等への不法な侵入を伴う窃盗を侵入窃盗、住居等への不法な侵入を伴わない窃盗を非侵入窃盗として解説します。
侵入窃盗であっても非侵入窃盗であっても窃盗罪が成立します(ただし、後述するように、住居侵入等罪が成立することがあります。)。
侵入窃盗だけを区別した「侵入窃盗罪」というような罪はありません。 -
(2)侵入窃盗にあたる手口
窃盗にあたる行為は、その手段や方法、対象物などによって手口が分類されています。たとえば、スーパーやコンビニなどで商品を盗む「万引き」も手口のひとつです。
侵入窃盗にあたる手口には、次のようなものがあります。- 空き巣……留守中の住宅に侵入して金品を盗むこと
- 居空き……家人が在宅中に住居に侵入して金品を盗むこと
- 忍び込み……夜間など家人が就寝中の住宅に侵入して金品を盗むこと
- 出店荒らし……閉店後の店舗に侵入して売上金などを盗むこと
- 事務所荒らし……会社などの事務所に侵入して保管金などを盗むこと
2、侵入窃盗で有罪になったときに問われる罪と刑罰
侵入窃盗の容疑で有罪となった場合に問われる罪を確認しておきましょう。
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(1)窃盗罪の刑罰
侵入窃盗は、刑法第235条の窃盗罪として、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることがあります。
比較的に軽微な犯罪と評価されがちな万引きでも、悪質とされる空き巣でも、手口に関係なく法定刑は同じです。 -
(2)侵入窃盗に関連する犯罪と刑罰
侵入窃盗に関連する犯罪として、刑法第130条前段に規定されている「住居侵入等罪」があります。
住居侵入等罪は、正当な理由なく、人の住居・人の看守する邸宅・建造物・艦船に侵入した場合に成立する犯罪で、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられることがあります。
侵入窃盗は窃盗罪に加えて住居侵入等罪が同時に成立することになります。
このようなケースは、刑法第54条1項の「牽連犯(けんれんはん)」に該当し、そのもっとも重い刑によって処断されます。牽連犯とは、複数の犯罪が目的と手段の関係になっている場合をいいます。
したがって、侵入窃盗は、窃盗罪と住居侵入等罪が牽連犯となり、最も重い罪である窃盗罪によって処断されることとなります。
ただし、この場合でも、住居等への侵入行為が不問となるわけではなく、非侵入窃盗と比較すれば、侵入窃盗の方がより悪質であるとして刑罰は重くなるのが通常でしょう。
3、侵入窃盗の容疑で逮捕された場合の流れ
侵入窃盗の容疑で逮捕された場合の刑事手続きの流れを確認していきます。
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(1)逮捕・勾留による身柄拘束を受ける
捜査機関によって逮捕されると、直ちに身柄を拘束されて自由な行動が制限されます。自宅へ帰ることも、会社や学校に通うことも許されないうえに、外部との連絡も認められません。
警察による身柄拘束の期限は逮捕から48時間以内です。この制限時間のうちに、警察官による取り調べを受けたうえで、被疑者の身柄と関係書類は検察官へと送致されます。
送致を受けた検察官は、送致から24時間以内に勾留を請求するか、または釈放しなくてはなりません。ここまでが逮捕による身柄拘束です。
検察官が「さらに身柄を拘束する必要がある」と判断すれば裁判所に対して勾留請求を行います。裁判所がこれを認めた場合は、勾留による身柄拘束に移ります。勾留による身柄拘束は10日間となります。また勾留延長がされた場合にはさらに最長10日間の勾留が続くことがあり、勾留の期間は最長20日間に及びます。
つまり、逮捕・勾留されると、警察段階で48時間、検察官の段階で24時間、勾留が20日間、合計で最長23日間にわたる身柄拘束を余儀なくされてしまいます。 -
(2)起訴・不起訴を判断される
検察官は、勾留が満期を迎える日までに起訴・不起訴を決定します。
検察官が被疑者の罪は裁判所に審理されるべきだと判断されれば起訴がされ、それまでは被疑者だった立場が被告人へと変わり、刑事裁判を受けることになります。刑事裁判への出頭を確保するために被告人としての勾留が続き、保釈が認められない限り結審の日まで身柄拘束が解かれません。
不起訴となった場合は、刑事裁判が行われません。身柄を拘束しておく必要もなくなるので、直ちに釈放されます。つまり、不起訴になれば前科もつかないということです。
勾留期間に起訴・不起訴の判断がつかない場合は、処分保留として釈放されます。検察官が処分を決めかねている状況であるため、後々起訴される危険もあります。 -
(3)刑事裁判にかけられる
検察官に起訴されると、通常は、起訴後1~2か月以内に初回の公判が開かれ、その後、数回の公判を経たうえで、最終日には判決が下されます。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下なので、実際に下される刑罰はこの範囲内で決まります。
お問い合わせください。
4、弁護士への依頼で受けられるサポートの内容
侵入窃盗は、ほかの手口の窃盗事件と比べると悪質性が高いと判断されやすく、厳しい対応を受ける事態が予想されます。
長期の身柄拘束や重すぎる刑罰を科されてしまう事態を避けるためには弁護士のサポートが欠かせません。
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(1)早期に接見して取り調べの対応方法をアドバイスできる
逮捕直後の72時間は、たとえ家族であっても被疑者との面会が認められません。警察官・検察官による取り調べへのアドバイスが必要となるタイミングなので、弁護士に接見を依頼してサポートを求めましょう。
取り調べのなかでどのような事実を認めてどのような容疑を否定するのか、暴力的・脅迫的な取り調べに対してどうやって対抗するのかといったアドバイスを得ることで、不当に重い処分を回避できる可能性が高まります。 -
(2)早期釈放に向けた弁護活動が期待できる
逮捕・勾留されると、起訴までに最長で23日間の身柄拘束を受けることになります。社会生活から完全に隔離された状態が続くため、解雇や退学といった不利益な処分を受ける事態を招きかねません。
弁護士にサポートを依頼すれば、早期釈放に向けた弁護活動が期待できます。勾留決定に対する準抗告・勾留理由開示請求・勾留取消請求等によって身柄拘束が解かれて在宅事件に切り替えられる可能性があります。 -
(3)被害者との示談交渉を依頼できる
刑事事件を穏便に解決する最善の方法は被害者との示談交渉です。刑事事件における示談では、被害者に対して真摯に謝罪したうえで示談金を支払い、被害届や刑事告訴の取り下げを請います。
被害者との示談が成立すれば被害回復がされ、被害感情が和らいだとして、検察官が不起訴処分とする可能性が高まるでしょう。
また、検察官が起訴に踏み切ったあとの段階でも、謝罪と弁済が尽くされているとして処分が軽減されることも期待できます。
5、まとめ
侵入窃盗は、非侵入窃盗と比較すると悪質と判断されやすいため、厳しい処分が予想されます。逮捕による長期の身柄拘束や刑罰を避けるには、弁護士によるサポートを受けることをおすすめします。
侵入窃盗の容疑をかけられてしまい、逮捕や刑罰に不安を感じている方は、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスにご相談ください。窃盗事件をはじめとした刑事事件を解決に導くための知見を豊富にもつ弁護士が、早期釈放や不起訴といった有利な処分を目指して全力でサポートします。
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