相続が終わった後で借金が発覚! 知らなかった場合の対処法を解説
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宮崎県の統計によると、令和2年度に亡くなった方の数は14068人でした。相続は財産の多寡は問わず、亡くなられた方の数だけ始まります。しかし、被相続人が亡くなった後、滞りなく遺産分割が済んだと思いきや、後から巨額の借金が判明するケースは少なくないようです。
もし相続完了後に被相続人の借金が判明した場合には、速やかに弁護士へご相談ください。相続放棄には民法上の期間制限が設けられており、過ぎてしまった場合にはイレギュラーな対応が求められるためです。
この記事では、相続後に相続人が把握していなかった借金が判明した場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「宮崎県の人口」(宮崎県総合政策部統計調査課、令和3年3月)
1、相続終了後に借金の存在が発覚した場合の対処法
相続手続きが完了した後、時間がたってから被相続人の借金が判明した場合、相続人としては対処に困ってしまうでしょう。
このような場合に、相続人として取り得る対応について解説します。
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(1)相続人が代わりに支払う
相続人に資力があれば、相続債務を代わりに支払ってしまうことも考えられます。
債権者としても、債権を回収できたことで満足し、その後トラブルに発展する可能性も低くなるでしょう。
ただし後述するように、相続人が債務を支払わずに済む方法もありますので、他の方法を検討してから支払いを行う方がよいでしょう。 -
(2)消滅時効を援用できるかどうか確認する
債権には、民法上、以下の消滅時効が規定されています(民法第166条第1項)。
- ① 権利を行使できることを知ったときから5年
- ② 権利を行使できるときから10年
※①②のうち、いずれか早い期間が経過した段階で、消滅時効完成
※2020年3月31日以前に成立した債権の場合、原則として「権利を行使できるときから10年」、貸金業者などからの借り入れの場合は例外的に「権利を行使できるときから5年」
もし債権の成立からかなり長い期間がたっている場合には、上記の消滅時効を援用できないか検討しましょう。
なお、債権者に対して債務の存在を認める発言をしたり、実際に債務を弁済したりした場合、「債務の承認」(民法第152条第1項)によって消滅時効がリセットされてしまうことがあるので注意が必要です。 -
(3)債務整理をする
どうしても債務を支払えない場合には、弁護士に債務整理を依頼することも有力な解決策となります。
債務整理は、借金額の免除・減額や、返済期日の延長などにより、債務者の負担を軽減する救済手段です。主に自己破産・個人再生・任意整理の3種類の方法があり、どの方法が適しているかは具体的な状況に応じて異なります。
もし債務整理が必要であると感じた場合には、方法選択や手続きの進め方などについて、早めに弁護士のアドバイスを求めましょう。 -
(4)相続放棄または限定承認をする
上記はいずれも借金を承継することを前提とした対処法ですが、借金をそもそも相続しないこともできます。
マイナスの財産を法的に相続しないようにするためは、「相続放棄」と「限定承認」のいずれかの手続きを行うことを検討してください。- ① 相続放棄(民法第939条)
相続財産中の資産・負債を一切相続しないという意思表示です。
各相続人が単独で行うことができます。 - ② 限定承認(民法第922条)
相続によって得る資産の限度でのみ、負債を承継するという意思表示です。
相続人全員(+包括受遺者)がそろって行う必要があります。
相続放棄をすれば、相続によって得る資産はありませんが、借金も一切承継しなくてよいメリットがあります。
また限定承認をすれば、少なくとも、相続によって引き継いだ権利義務がマイナスの価値になってしまうことを避けられます。
相続完了後に被相続人の借金が判明した場合には、一度相続放棄や限定承認の可能性を検討しましょう。ただし、相続放棄や限定承認を行うためには一定の条件があります。 - ① 相続放棄(民法第939条)
2、期限に間に合いそうにない場合に相続放棄や限定承認をするには?
相続放棄と限定承認は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に、家庭裁判所に申述しなければならないという期間制限が設けられています(民法第915条第1項本文)。この期間を「熟慮期間」といいます。また、遺産から借金の返済をするなど、相続財産の一部を処分した場合には、相続放棄および限定承認はできなくなるので注意が必要です。
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(1)期間の伸長
「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」という期間については、相続人が相続財産の状況を調査してもわからない等の理由があれば、相続人などの利害関係人が請求によって、家庭裁判所によって熟慮期間の伸長が認められることがあります(民法第915条第1項但し書き)。
なお、熟慮期間伸長の申立ては、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」という期間内に行わなければならず、期間経過後の申し立ては認められません。 -
(2)家庭裁判所に理由をきちんと説明する
熟慮期間の伸長を認めるかどうかは、家庭裁判所が諸般の事情を総合的に考慮し、その裁量によって決定します。
弁護士に相談すれば、家庭裁判所での手続きを全面的にサポートしてもらうことで、説得的な説明が可能となります。
3、期限後に相続放棄や限定承認をするには?
熟慮期間が経過してしまった場合には、もはや相続放棄や限定承認をすることはできません。
では、被相続人の死亡1年後に被相続人に借金があることが判明したケースでは、相続人は相続放棄をすることはできないのでしょうか。
同様のケースで、最高裁は、熟慮期間中に限定承認または相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであって、相続人がこのように信ずるについて相当な理由がある場合には、例外的に借金の判明時点を熟慮期間の開始とする旨の判断をしています。
つまり、上のケースでは、借金が判明してから3か月以内に相続放棄をすることができるとしたのです。
4、相続時に借金の有無を確認する方法
相続完了後に借金が判明すると、相続人はイレギュラーな対応を迫られ、大きな負担とリスクを抱えてしまいます。
そのため、できる限り遺産分割協議等を行う時点で、相続債務の存否や内容をすべて把握しておくことが望ましいです。相続債務の存否や内容を確認するためには、以下の方法が考えられます。
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(1)信用情報機関に照会する
金融機関やカード会社などに対する債務を調べるには、信用情報機関に対して照会を行いましょう。
信用情報機関は、個人が行った過去の信用取引の履歴(ローン、カード利用の実績や、返済実績など)についての情報をデータベースに記録しています。そのため、被相続人の信用情報を照会すれば、現存する債務の有無や内容を確認できます。
信用情報機関には以下の3つがありますので、念のため3つすべてに照会を行いましょう。- ① 全国銀行個人信用情報センター
- ② 株式会社日本信用情報機構
- ③ 株式会社シー・アイ・シー
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(2)被相続人の持ち物(借用書・郵便物など)を調べる
個人から借り入れた借金など、金融機関やカード会社以外に対する債務については、信用情報を照会してもヒットしません。このような債務は、被相続人の持ち物をていねいに調べることで判明する場合があります。
たとえば、被相続人が保管している書類を調べてみれば、借用書や返済を督促する郵便物が見つかるかもしれません。遺品整理を行う際に、こうした債務の証左が残されていないかを、念のため注意深く確認しましょう。 -
(3)預貯金口座の取引履歴を調べる
被相続人の預貯金口座から、定期的に同じ口座へ振り込みが行われている場合などには、それが借金の返済という可能性もあります。
預貯金口座の取引履歴は、相続財産の全体像を把握する観点からも重要ですので、ていねいに確認作業を行いましょう。
お問い合わせください。
5、相続債務の存在が判明したら、すぐに弁護士に相談を
相続財産の中に債務の存在が判明した場合には、相続放棄や限定承認を含めた対応を速やかに検討しなければなりません。相続放棄と限定承認には短い期間制限が設けられており、早めに対応しなければ、思いがけず債務を負ってしまうことになりかねないからです。
弁護士に相談すれば、債務整理などのその他の対処法を含めて、状況に合わせた対処法についてアドバイスを受けられます。依頼することによって、迅速な財産・債務の調査を経て、相続放棄手続き等を適切に進めることが可能です。
相続すべき財産に借金など債務の存在が判明した場合、できるだけ早い段階でベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
6、まとめ
相続完了後に、相続人が知らなかった借金が判明した場合、早期に対応しなければ、思いがけず不利益を被ってしまうおそれがあります。そのため、速やかに弁護士に相談をして、相続放棄・限定承認・債務整理などの選択肢をご検討ください。
ベリーベスト法律事務所では、遺産相続はもちろん、債務整理にも対応しております。場合によって税理士とも協働して、依頼者にとって真に望ましい解決の実現をサポートすることも可能です。相続財産中の借金が判明してお困りの方は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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