遺産相続で遺産分割協議の段階から弁護士に相談したほうがいいケース
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宮崎県都城市役所には、大切なご家族を亡くした遺族をサポートする「おくやみ窓口」が設置されています。各種届け出は非常に大変な手続きとなるため、とても有意義な制度といえるでしょう。
しかし、それ以上に大変な事態に陥りやすいのが、遺産分割協議です。相続は、被相続人が亡くなった時点からスタートしますが、相続人となる遺族同士で協議する際、それまで仲がよかった親族同士でも揉めてしまうという話をよく耳にします。
トラブルによって遺産分割協議が長引くと精神的な負担も大きくなるため、できるだけスムーズに話を進めたいものです。この記事では、遺産分割の流れやよくあるトラブル、遺産相続を当初の段階から弁護士に相談したほうがよいケースについて、宮崎オフィスの弁護士が解説します。
1、遺産分割協議とは
相続が発生し、遺産分割をする場合、遺言がある場合には遺言に従って遺産分割します。他方、遺言がない場合にはそれぞれの法定相続分に従って遺産分割することになります。
もっとも、有効な遺言があっても、相続人全員で話し合う「遺産分割協議」によって、自由に遺産分割をすることができます。
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要であることが重要なポイントです。相続人のうち誰かひとりでも欠けてしまえば、有効な遺産分割協議はできません。たとえば、相続人が行方不明だったり、もしくは未成年だったりしたからといって、勝手に話を進め、本人の了承を得ずに遺産分割協議を成立させることはできない点に注意が必要です。
2、遺産分割の流れ
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(1)相続人と相続財産の確認
まずは、誰が相続人で、相続財産としてどのような財産があるのかを調査しましょう。あなたの知らない相続人や財産が存在する可能性があるためです。被相続人の生前に財産目録が作成されていたとしても、その財産がすでに手放されている可能性もあります。念のため、一通り調査をしておきましょう。
相続人については、認識されていない親族がいないかをきちんと戸籍で確認し、相続人の漏れがないようにします。この段階で争いがある場合には、それを確定させるための訴訟が必要になることがあるでしょう。 -
(2)遺産分割協議
相続人と実際の遺産を特定できたら、すべての相続人に対して遺産分割協議を行う旨連絡を行い遺産の分割について話し合います。
協議で話し合いがまとまった場合には、その内容を書面に残します。これを遺産分割協議書といいます。前述のとおり、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要ですから、遺産分割協議書も相続人全員が署名押印したものを作成することが必要です。 -
(3)遺産分割調停
遺産分割協議がまとまらない場合、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定めた家庭裁判所へ遺産分割の調停を申し立てます。遺産分割調停では、裁判所において裁判官や調停委員を間に入れて話し合いを行います。
その結果話がまとまると調停調書が作成されます。調停調書は債務名義の効力を持つため、調停調書に記載された義務の不履行があった際には強制執行が可能となります。 -
(4)遺産分割審判
遺産分割調停でもまとまらない場合は遺産分割審判に移ります。審判では、それぞれの相続人が主張と立証を行い、それを元に裁判所が遺産分割について審判を行います。
審判は、その審判の告知の日の翌日から2週間で確定し、その内容に従って遺産分割を行います。しかし、確定前であれば告知に不服のある当事者は即時に抗告することができます。その場合、高等裁判所の抗告審で不服申し立てに理由があるかどうかが判断されることになります。
3、弁護士に遺産分割協議段階から依頼すべきケース
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(1)遺産分割協議中にトラブルが起こりそうなとき
まずは、遺産分割協議でトラブルが発生しがちなケースをご紹介します。
最初にしっかり調査をすることでトラブルを回避できるケースが多々あります。調査が難しいときや、話し合いに応じようとしない相続人がいる場合は、相続がスタートした段階から弁護士に依頼してしまったほうが賢明です。
● 遺産の多くが不動産や、骨とう品や美術品のように分割・評価しにくい遺産がある場合
評価しにくい遺産や分割しにくい遺産が多いとき、割合が不均等になりやすいため、トラブルの原因になりえます。
● 前妻との間などに子どもがいた場合
前妻との間など、遺族のほかに子どもがいた場合も、大きなトラブルになりがちです。相続人である子ども本人は誰とも面識がない状態で協議に参加することになるケースもあるでしょう。相続人の調査せずに協議を進めてしまい、分割後にその存在が発覚するというケースも起こりえます。
● 代襲相続が起こった場合
すでに相続人が亡くなっているために代襲相続をするケースなども、他の相続人と面識がないことが原因でトラブルになる可能性もあります。
● 認知症や未成年の相続人がいる場合
本人の意思伝達や遺産の管理が難しい認知症などの病を患っている方や、未成年者が相続人にいる場合、法定代理人の選任が必要になることがあります。たとえば、親子双方が相続人となっている場合で、遺産分割協議を行うときは、親が子どもの取り分を減らすこともできる利益相反の状態となってしまうため、親であっても子どもの代理人になることができません。
● 遺産である不動産に相続人が住んでいる場合
主な相続財産が自宅のみで、相続人のひとりがその家に住んでいるケースでは、その相続人が続けて住むことを希望することが多いためトラブルに発展する傾向があります。
● そもそも相続人ではなかった場合
自分では相続人だと思っていたのに、相続人と養子縁組をしていなかったため、実は相続人ではなかったということが起こりえます。具体的には、介護もして見送った被相続人があなたの育ての親だったなどのケースです。戸籍謄本などは必ず取り寄せて確認したほうがよいでしょう。 -
(2)遺産分割協議後にトラブルとなりそうなとき
協議が終わってからも、適切な手続きをしなければトラブルが起こる可能性があります。これらの事態が予見できる場合は、あらかじめ弁護士に相談しておくか、対応を依頼して遺産分割協議に挑んだほうがよいでしょう。
● 遺産分割協議が無効だった
故意に一部の相続人のみで協議した場合はもちろん、相続人全員で協議したと思っていたが、実は被相続人には後で認知した婚外子がいた場合には遺産分割協議そのものが無効になります。
● 遺産分割協議後にほかの遺産が見つかった
事前に相続財産を確認したうえで協議に臨んだはずだが、後になってさらに別の遺産が見つかることがあります。この場合、後から見つかった遺産についてのみ再度遺産分割協議を行うのが一般的です。
相続人の誰かがわざと隠していた場合や、遺産の大部分を占めるほどの遺産であった場合には、遺産分割協議がやり直しになることがあります。
● 遺産分割の手続きが滞っている
遺産分割協議書を作成したにもかかわらず、相続人のひとりが適切な手続きを行わないことが元となり、トラブルになるケースもあります。この場合も調停や裁判によって遺産分割を進めていくことになります。
● 予想していない額の税金が請求された
分割の方法によっては、相続税が多くかかってしまうことが起こりえます。どのように分割したほうが税金を抑えられるかなどについては、初期の段階から税理士に相談しながら進めたほうがよいでしょう。ベリーベスト法律事務所の弁護士であれば、税理士と連携して対応することが可能です。
4、遺産分割協議で弁護士ができること
相続人の関係が円満でない場合、お互いが感情的になり対立する傾向があり、冷静に協議を進めることは難しいでしょう。この場合に、交渉の窓口として弁護士に代理人を依頼することは有益です。
また、生前の贈与や貢献による寄与分の主張など、遺産分割についての適切なアドバイスを受けることができるメリットもあります。さらに、遺産分割調停や遺産分割審判になった場合でも、代理人として自身の主張を的確に伝えてもらうことに期待できます。裁判所に出向く時間を割く必要もありません。
もちろん、トラブルが発生してからでも弁護士に相談することはできますが、状況によっては取れる手段が限られてしまうことがあります。トラブルを回避したいとお考えであれば、相続が始まった段階で相談しておくことで、状況に応じた適切な対応をすることが可能となります。
5、まとめ
今回は、遺産分割協議の流れやトラブルについてお伝えしました。いくら仲のよい親族であっても、遺産相続が発端となり関係性が悪化することがあります。もともと疎遠だった親族ともなれば、なおさらその可能性が高いといえるでしょう。遺産分割協議のトラブルは精神的に負担であり、大きなストレスにもなってしまいます。
遺産分割協議でお困りなら、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください。宮崎オフィスの弁護士が、場合によっては全国のオフィスやグループ法人の税理士などと連携を取り、適切な遺産相続が実現するよう力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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