契約社員なのに解雇されそう! 会社都合と自己都合で違いはある?

2022年02月07日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 契約社員
  • 解雇
  • 会社都合
契約社員なのに解雇されそう! 会社都合と自己都合で違いはある?

宮崎労働局が公表している「令和2年度総合労働相談並びに個別労働紛争解決制度及び均等5法の施行状況について」によると、令和2年度の宮崎県内の総合労働相談件数は1万1015件であり、民事上の個別労働紛争相談件数は、2475件でした。民事上の個別労働紛争の相談内容では、いじめ・嫌がらせに次いで、「自己都合退職」、「解雇」に関するものが上位を占めています。

契約社員は、正社員に比べて立場が不安定であることから、解雇もされやすいと考えている方も多いでしょう。しかし、契約社員を期間途中で解雇する場合には、正社員を解雇する場合よりも厳しい要件が課されています。また、解雇であるにもかかわらず会社側からは「自己都合」にしてほしいと言われることもあります。自己都合と会社都合ではどのような違いがあるのでしょうか。

今回は、契約社員を解雇するための条件や退職理由の違いによる失業保険への影響などをベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスの弁護士が解説します。


労働問題についてはこちら 労働問題についてはこちら

1、契約社員なのに解雇されることはあるのか

契約社員は、1年や2年といった期間を定めて雇用される労働者ですが、期間途中に解雇されることがあるのでしょうか。以下では、有期契約労働者である契約社員の解雇について説明します。

  1. (1)契約社員の解雇には「やむを得ない事由」が必要

    契約社員は、正社員よりも立場が不安定であることから、正社員よりも解雇が容易だと考えている方もいるかもしれません。しかし、実は、契約社員の解雇の方が正社員よりも厳格に判断されることになります。

    契約社員をはじめとした雇用期間について定めがある労働契約を締結した労働者は、契約期間内は働き続けることができるという合理的な期待を有しています。そのため、労働契約法では、使用者は、「やむを得ない事由」がなければ、労働者を解雇することはできないとされています(労働契約法17条1項)。

    これは、期間の定めのない労働契約を締結している正社員よりも厳格な要件となっています。

  2. (2)契約社員が解雇される可能性があるケース

    一般的に「やむを得ない事由」とは、契約期間の満了を待つことなく、直ちに雇用契約を終了せざるを得ないような特別の重大な事由のことをいいます。

    どのような場合に「やむを得ない事由」が認められるかは、一概にいうことはできませんが、労働者の使用者に対する重大な非違行為があったこと、労働者が就労不能になったこと、雇用の継続を困難とするような経営難になったことなどが一例として挙げられます。

    裁判例でも、有期労働契約を締結した労働者の期間途中の解雇においては、「やむを得ない事由」を容易には認めません。したがって、会社から下された解雇処分に納得ができない場合には、しっかりと争うことによって、解雇の無効を認めてもらえる可能性があります

2、期間満了による退職は「解雇」ではない

契約社員の場合には、契約期間が定められているため、契約期間が満了したことを理由に労働契約が終了することがあります。このような事情で労働契約が終了することは、解雇ではなく「雇い止め」と呼ばれています。

  1. (1)雇い止めとは

    雇い止めとは、契約社員のように期間の定めのある有期労働契約を締結している労働者について、期間満了時に契約を更新することなく、労働契約を終了させることをいいます。

    期間の定めのある労働契約は、あらかじめ労働者と使用者による合意で契約期間を定めたものですから、期間が満了すれば労働契約は終了するのが原則です。そのため、期間満了によって雇い止めをされたとしても、原則として、違法になることはありません

  2. (2)雇い止めが違法になるケース

    雇い止めは、原則として違法ではありません。しかし、その態様によっては違法と判断されうるケースがあります。

    たとえば、複数回にわたって契約更新が繰り返され、雇用期間も長期間に及んでいるケースでは、契約更新への期待が生じていたり、実質的にみて期間の定めのない労働契約と変わらない状態になっていたりすることがあります。有期雇用契約は、解雇を例外的にしか認めない無期労働契約の抜け穴的に利用されることもありますので、安易な雇い止めを認めることは、有期労働契約を締結した労働者の生活を著しく不安定にするおそれがあるといえます。

    そこで、雇い止めについても、一定の場合には、解雇と同様に扱い、不合理な雇い止めについては無効になる場合があります(労働契約法19条)。

    雇い止めが例外的に無効になるかどうかは、以下のような要素を総合考慮して判断します。

    • 業務の客観的内容(従事する仕事の種類、内容、勤務形態)
    • 業務の客観的内容(従事する仕事の種類、内容、勤務形態)
    • 当事者の主観的態様(継続雇用を期待させる言動、認識の有無、程度)
    • 更新手続き・実態(契約更新状況、契約更新時に行う手続きの厳格性程度)
    • 他の労働者の更新状況(同様の地位にある労働者の雇い止めの有無)
    • その他(有期労働契約を締結した経緯、勤続年数・年齢などの上限設定の有無)

3、会社都合か自己都合かによって変わるもの

退職理由が会社都合(特定理由離職者・特定受給資格者)か自己都合(一般の離職者)かによって、失業保険の受給額や受給日数などに影響が出ることがあります。以下では、退職理由ごとの契約社員の失業保険について説明します。

  1. (1)失業保険の受給資格

    失業保険の基本手当の受給資格は、自己都合の場合には、離職前2年間の被保険期間が12か月以上あることが必要です。これに対して、会社都合の場合には、離職前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば受給資格を得ます。

    このように、失業保険の基本手当の受給資格の面では、会社都合の方が有利といえます。

    なお、自己都合と会社都合に共通の受給要件としては、就職がまだ内定していないなど失業の状態にあることも必要になります。失業の状態とは、以下の条件をすべて満たす状態をいいます。

    • 積極的に就職しようとする意思があること
    • いつでも就職することができる能力(健康状態・環境など)があること
    • 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、職業に就いていないこと
  2. (2)失業保険の支給日

    自己都合および会社都合のいずれであっても、失業保険の基本手当を受給するまでには、7日間の待機期間が設けられています。待機期間は、雇用保険の支給対象とはなりませんので、最低でも7日間の経過を待つ必要があります。

    さらに、自己都合の場合には、待機期間満了の翌日から、さらに2か月間の給付制限が設けられています。そのため、自己都合の場合には、会社都合に比べて、失業保険の基本手当が支給されるまでの期間が長くなっています。

    なお、自己都合の場合の給付制限については注意が必要です。以前は3か月とされていましたが、法改正によって令和2年10月1日以降に離職した場合には、2か月の給付制限になっています。

  3. (3)失業保険の支給期間

    失業保険の基本手当を受給することができる日数のことを「所定給付日数」といいます。基本手当の所定給付日数は、雇用保険の被保険者期間、年齢、離職理由によって決まります。

    会社都合の場合には、「90日から330日」であるのに対して、自己都合退職の場合には、「90日から150日」となっています。このように会社都合の方が、所定給付日数が手厚くなる場合があります。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ一覧
営業時間外はメールでお問い合わせください。

4、不当解雇や雇止めなど会社と争うときは弁護士に相談を

契約社員が不当解雇や雇い止めなどを争うときには、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)解雇や雇い止めの有効性を判断してくれる

    前述の通り、会社が契約社員を契約期間途中に解雇するためには、「やむを得ない事由」が必要となり、その解雇の有効性については、厳格に判断されることになります。また、期間満了によって労働契約が終了する場合であっても、それまでの更新状況などから契約更新に対して期待が生じていたり、実質的にみて期間の定めのない契約と異ならない状態になっていたりするケースのであれば、当該雇い止めは違法と判断されることがあります。

    このように、解雇や雇い止めの処分を受けたとしても、適切に争うことによって、引き続き労働者として働くことができる地位を認めてもらうことができる可能性があります。ただし、どのような場合に解雇や雇い止めが無効になるかは、具体的な状況によって異なります。そのため、法律の知識がなければ正確に判断することは難しいでしょう。

    解雇や雇い止めに納得がいかない場合には、まずは、弁護士に相談をして、その有効性を判断してもらうことをおすすめします。

  2. (2)労働者に代わって会社と交渉ができる

    解雇や雇い止めが無効となる可能性がある場合には、労働契約上の地位の確認を求めて、会社と争うことになります。

    会社と争う場合には、まずは、会社と話し合いによって解雇や雇い止めの撤回を求めていくことがスタート地点です。しかし、立場の弱い労働者の方が個人で交渉をしたとしても、まともに取り合ってくれないケースは多々あります。

    しかし、弁護士が労働者の代理人として会社との交渉を行うことによって、対等な立場で交渉を進めることが可能となるでしょう。法的根拠に基づいて説得的に交渉を行うことができれば、話し合いによる早期解決を実現することも期待できます。

  3. (3)法的措置をとることも可能

    話し合いによって解決することができない場合には、労働審判や裁判などの法的手段をとることになります。その場合も、弁護士に依頼をすることによって、それらの手続きをすべて任せることが可能です。

    労働審判や裁判などは非常に専門的な手続きですので、知識や経験がなければ、適切に手続きを進めていくことができません。本来勝つことができる裁判であっても、手続きの進め方が不適切であったために負けてしまうという事態も起こりえます。労働問題への対応について知見が豊富な弁護士に任せてしまうのが安心といえるでしょう。

5、まとめ

契約社員が解雇や雇い止めをされたとしても、その経緯や内容によっては、十分に争う余地がある可能性があります。また、納得して会社を辞める場合でも、会社都合になるか自己都合になるかによって、その後の失業保険の基本手当の受給に関して大きな違いがありますので、安易に会社側の言い分に従って、自己都合にしないように注意が必要です。

解雇や雇い止めについてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスまでお気軽にご相談ください。どのように対応すべきか状況に適したアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています