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転職したら労働条件が違う! 求人広告と実際の条件が異なるのは違法?

2021年11月30日
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転職したら労働条件が違う! 求人広告と実際の条件が異なるのは違法?

宮崎労働局が公表する統計データによりますと、令和3年7月の宮崎県におけるパートを含む新規求人数は9766件でした。

多くのケースで、労働者を採用したい企業と仕事を探している労働者の「出会いの場」となるのが、ハローワークや就職情報サイトなどに掲載されている、いわゆる「求人広告」です。しかし、いざ就職してみると求人広告に記載されていた内容と、実際の労働条件が違うということは起こり得ます。

そこで本コラムでは、転職したときに求人広告に記載されていた内容と実際の労働条件が違うという事態に遭遇した人向けに、企業の違法行為として訴えることができるケース、そうではないケースについて、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスの弁護士が解説します。

1、求人広告と実際の条件が違うのは違法?

求人広告と労働条件について規定した法律は、一応存在しています。しかし、その運用と現実についてはグレーゾーンな面があるという状況です。

まずは、職業安定法と労働基準法における、求人広告と労働条件についての規定をご紹介します。

  1. (1)職業安定法

    職業安定法第5条の3では、ハローワークや使用者または派遣事業者が労働者の募集または職業紹介をする際に、労働者に対して「従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定しています。

    求職者は、求人広告に掲載されている仕事内容、雇用の種類、賃金、勤務時間、勤務場所など、仕事を探すにあたってもっとも重視すると考えられる労働条件を確認して、その企業に応募するかどうかを検討します。したがって、その内容は実際の労働条件と照らし合わせて相違ないことが労働者にとって望ましいということは、いうまでもありません。

    同法第5条の5では、ハローワークなどの公共職業安定所や職業紹介事業者は「求人の申込みはすべて受理しなければならない」としつつも、「その内容である賃金、労働時間その他の労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当であると認められる求人の申込み」については受理しないことができると規定しています。

    また、同法第658号では「虚偽の広告をなし、または虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集もしくは労働者の供給を行った者またはこれらに従事した者」については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科すと規定しています。
    以下で述べるとおり、求人の際の条件と実際の労働条件が異なっていたとしても、直ちに違法となるわけではありません。しかし、求職者を集めるために、最初から変更するつもりで良い条件を提示し、採用後に著しく不利な条件で労働者を働かせた場合には、同法65条8号違反にあたる場合があるでしょう。

  2. (2)労働基準法

    では、労働関連法令におけるもっとも基本的な法律であり、労働条件に関する最低基準を定めている労働基準法ではどうなのでしょうか。

    労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定しています。

    そして、書面で明示すべき労働条件については、以下のとおり規定しています(労働基準法施行規則第5条第1項および同条第4項)。

    • 労働契約の期間
    • 労働契約に期間の定めがある場合、更新の有無や更新方法など、契約の更新に関する事項
    • 仕事をする場所および仕事の内容
    • 始業時刻および終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日および休暇、交代制勤務のローテーションなどに関する事項
    • 賃金の決定、計算と支払いの方法、締め切りと支払いの時期
    • 解雇の事由を含む、退職に関すること


    労働基準法第15条の規定に違反した使用者は、同法第120条の規定により30万円以下の罰金に処されます。

    ただし、労働基準法をはじめとする一連の労働関連法令に、求人広告の内容と労働条件は同一のものでなければならないと規定する法律はありません

    また、使用者が労働条件を書面で明示すべきタイミングは、「労働契約の締結のとき」です。通常、使用者と労働者が労働契約を締結するときは、転職後の出社初日が多いと考えられますつまり、求人広告と明示された労働条件が違っていた場合、それがどうしても受け入れられなければ、この時点ではすぐに転職先の会社を辞めるくらいしか労働者に打つことができる手はないのです。

  3. (3)求人内容と実際の待遇が異なるケースがある理由

    職業安定法では規定されている待遇条件についての記載ですが、必ずしも厳密に守られていないというのが現状です。

    この背景には、以下2つの判例が影響していると考えられます。

    • 日新火災海上保険事件(東京高裁 平成12年4月19日判決)
      「中途採用ための求人広告は、採用の申し込みの誘引に過ぎない。したがって、求人広告が直ちに労働契約の内容になるわけではない」
    • 八州測量事件(東京高裁 昭和58年12月19日判決)
      「求人票記載の基本給額は見込み額に過ぎず、労働契約上の賃金請求権の根拠となるものではない」


    つまり、求人広告の内容は当該企業が労働者を募集していることを告知するために行われるものであり、掲載する条件はあくまでも見込みにすぎないということになるのです。求人広告の内容が「〇万円から〇万円」、「応相談」などのような曖昧な記載が目立つのは、このような考え方によるものと考えられます。

    したがって、求人広告に掲載されている条件がそのまま労働条件にならなくても、直ちに違法とはいえないということになります。
    求人広告に掲載されている条件と実際の労働条件に違いがあったとしても、求職者が最終的に実際の労働条件に同意して労働契約を締結したのであれば、その契約は有効に成立することになります。

2、入社後に条件が異なった場合

これまでご説明したように、求人広告の内容と実際の労働条件が多少異なっていたとしても、それを理由に使用者を訴えることは難しいと考えられます。

しかし、たとえば事務職の採用と聞いていたのに営業職に配属された、残業はないと聞いていたのに残業が強制だった、固定給制だと聞いていたのに歩合給だった、などというようなワークライフにも影響が出るような虚偽の内容であれば、その是正に向けて何らかの行動を起こしたほうがよいかもしれません。

まずは、求人広告の内容と実際の労働条件との差異の程度が使用者の是正を要するか確認するために、総合労働相談コーナーや労働基準監督署、そして労働問題を扱っている弁護士に相談してみてください。

3、損害賠償を請求できる可能性があるケースとは

求人広告の内容と違うというケースではなく、労働契約と実際の労働条件が違う場合、あるいは労働契約そのものが違法だった場合は、状況が異なります。

使用者に対して損害賠償を請求できる可能性がでてくるのです。

  1. (1)労働契約と実際の労働条件が違う

    労働契約とは、いうまでもなく使用者と労働者の労働条件について定めた契約です。

    これを書面で交付したのにもかかわらず、労働契約の内容と実際の労働条件が違い、それが労働者にとって不利な場合は、使用者による契約上の債務不履行と考えることができます。これに対して、労働者は使用者の債務履行と損害賠償を請求することができる可能性が出てくるでしょう。

  2. (2)違法な労働契約

    労働基準法13条では、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による」と定めています。

    つまり、たとえば1日20時間労働や時給100円、仕事に必要な機材・資材はすべて労働者負担というように、労働基準法をはじめとした労働関連法令に反するような労働契約は無効となり、労働関連法令に定める最低基準が適用されるのです。

    もし違法な内容によって労働契約が無効となった場合、違法な内容で労働力を提供していた部分と最低基準の差分については、使用者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

4、労働トラブルは弁護士へ相談を

労働基準法などの労働関係法令や各種制度は複雑かつ難解であり、改正も頻繁です。また、求人広告や労働契約と実際の労働条件の違いをめぐって使用者と争うことは会社と争うこと、つまり組織に対して行うことを意味します。

個人と組織の争いになるわけですから、不十分な経験や知識のままでは交渉の方法を誤り、不本意な結果になることも考えられます

そのような事態を避けるために、企業を相手取って求人広告や労働契約と実際の労働条件の違いなど労働問題の解決を目指す場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

労働問題全般について、企業との交渉や裁判による解決に実績豊富な弁護士であれば、あなたに各種の法的アドバイスをすることはもちろんのこと、あなたの代理人として企業と交渉などを行い、あなたにとってよりよい方向で解決することを目指すことができます。もし企業を相手取った労働審判や訴訟になった場合でも、弁護士はあなたの代理人として裁判上の一切の手続きを行います。

なお、労働問題については社会保険労務士も専門家といえるのですが、法律であなたの代理人となる職権を持つのは、弁護士だけです。

5、まとめ

ただ単に求人広告と実際の内容が多少異なっているだけでは、企業を訴え損害賠償を請求することは難しいと考えられます。しかし、労働契約と実際の労働条件が違う場合、あるいは労働契約そのものが違法だった場合はそのかぎりではありません。

しかし、あなたに企業から損害賠償の支払いを受ける正当な事由があったとしても、対応や交渉に失敗しては元も子もないのです。したがって、企業を相手とした労働問題の解決を目指すうえでは弁護士のような専門家に依頼したほうが、あなたにとってより良い結果が期待できるといえます。

ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスでは、労働問題全般に関するご相談を承っております。労働問題についてお悩みのときは、できるだけ早期にご相談ください。あなたのために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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