事業承継の相談先は? 法律事務所に相談するメリットを解説
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令和2年度における帝国データバンクの調査によると、宮崎県内の企業2101社のうち、53.3%にあたる1120社が、後継者不在の状況にあることがわかりました。
「そろそろ引退を、見据えて事業を承継する準備をしたい…」と考えているけれど、誰に相談すればよいかわからない、という経営者の方もおられるでしょう。事業承継に関する相談を取り扱う業者はさまざま存在しますが、安定した形で事業承継を実行したい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
本コラムでは、事業承継の手順や主な相談先、弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスの弁護士が解説します。
1、事業承継とは?
事業承継とは、経営している事業を後継者に譲り渡すことをいいます。
企業の経営者の方が「高齢にさしかかってきた」「十分にお金を稼いだので、今後はゆっくりしたいな」どの理由から引退や会社の売却を考えはじめたら、事業承継を検討すべきタイミングといえるでしょう。
特に、高齢を理由に引退を考えている場合には、ご自身が元気なうちに事業承継のめどを付けておくことが、後継者のためにも会社のためにもプラスとなります。
頃合いを見計らって、早めに事業承継の計画を立てることをおすすめします。
2、株式譲渡により事業承継を行う際の一般的な手順
事業承継の方法としては、合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡・株式譲渡など、さまざまなものがあります。
そのなかでも、オーナーが保有する株式を後継者に移転する「株式譲渡」は、手続きが比較的シンプルであることから、多くの事業承継の事例で活用されている方法です。
以下では、株式譲渡の方法により事業承継を行う際の一般的な手順を解説します。
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(1)後継者を選定する
まずは、事業の買い手に当たる後継者を選定する必要があります。
同族経営であれば、子どもを中心とした親族のなかから、後継者を選定するのが一般的です。
もし親族のなかで後継者が見つからない場合には、外部から後継者を探してこなければなりません。
外部から後継者を探すとなると時間がかかってしまう場合も多いので、M&A仲介会社などに相談して、早めに選定に着手することをおすすめします。 -
(2)株式譲渡に関する条件を取り決める
後継者候補が定まったら、株式譲渡に関する条件を交渉します。
「自身の子どもなどに対する事業承継であれば、譲渡対価を定めなくてもよい」と思われる方もおられるかもしれません。
しかし、贈与税や譲渡所得税の課税には、十分の注意が必要となります。
外部の後継者に対する事業承継の場合には、譲渡対価の点に加えて、会社に対するデューデリジェンスに関する事項やリスク分配などを含めた、シビアな条件交渉が想定されるでしょう。 -
(3)株式譲渡に関する会社の承認を取得する
事業承継によって譲渡される株式に譲渡制限が付されている場合には、株式譲渡を実行するためには会社の承認が必要となります。
会社による株式譲渡の承認は、原則として、株主総会決議によって行われます(会社法第139条第1項)。
ただし、取締役会設置会社の場合は取締役会が決議するほか、定款に別段の定めがある場合には、その定めに従います。 -
(4)株式譲渡契約を締結する
合意された株式譲渡の条件を株式譲渡契約書にまとめて、売り主と買い主が相互に調印を行います。
譲渡実行後にトラブルが発生した場合には、株式譲渡契約書の規定に従った処理が行われるため、想定されるリスクを網羅した内容で締結することが大切です。
特に、外部の後継者に対して事業承継を行う場合には、株式譲渡契約書の重要性はさらに増します。株式譲渡契約書は慎重にレビューしましょう。 -
(5)株式譲渡を実行する
株式譲渡契約書に規定される前提条件が充足された場合、所定の譲渡実行日において、株式譲渡が実行されます。
具体的には、買い主が譲渡対価を支払うのと同時に、売り主から買い主へと株式が移転するのです。
なお、株式の移転に伴い、株主名簿(会社法第121条)の書き換えが必要となります。
その後で必要に応じて、役員の入れ替えなどを行ったのちに、事業承継は完了となります。
3、事業承継に関する主な相談先
事業承継支援に関する相談は、さまざまな業者が受け付けています。
それぞれの業者には得意分野があるので、ご自身が懸念している点を解消してくれそうな業者を相談相手に選ぶとよいでしょう。
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(1)弁護士・税理士・会計士などの士業
事業承継には、法律・税務・会計のルールが密接に関連します。
そのため、これらのルールに精通した弁護士・税理士・会計士などは、事業承継に関する相談を積極的に受け付けています。
事業承継に関する悩みが、上記のいずれかの分野に当てはまる場合には、該当する士業に相談しましょう。 -
(2)金融機関
銀行や信託銀行などには、事業承継を専門的に取り扱う部署が存在する場合があり、事業承継の相談も随時受け付けられています。
株式譲渡代金の融資に関する相談もできるため、資金調達の面で不安がある場合には、金融機関に事業承継の相談をしてみましょう。 -
(3)商工会議所
各地域の商工会議所では、事業主向けのさまざまなサポートを提供しています。
事業承継に関しても、各種専門家の紹介など、事業主の状況に応じたサポートが受けられるでしょう。
また、全国の商工会議所には、中小企業庁から委託を受けた「事業引継ぎ支援センター」が設置されています。 -
(4)M&A仲介会社
M&A仲介会社は、事業承継のマッチングに強みを発揮する業者です。
身内のなかで後継者が見つけられずに、外部から後継者を探そうとする場合には、M&A仲介会社に依頼することをおすすめします。
豊富な買い主候補のリストから、売り主が希望する条件に合った買い主を選定してくれるでしょう。
4、事業承継を弁護士に相談するメリット
事業承継に関する相談先としてはさまざまな士業や団体が存在しますが、安定した条件によって事業承継を実行したい場合には、弁護士への相談をおすすめします。
以下では、事業承継に関して弁護士に相談や依頼をするメリットを解説します。
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(1)契約に関するリスクをきちんと分析できる
事業承継は、どの方法をとるにしても大がかりな取引になるため、契約から発生するトラブルのリスクも高くなってしまいがちです。
契約を締結・実行したのちに起こるトラブルをできる限り予防するためには、事前にどのようなリスクが想定されるかを分析し、その対処法を契約書に書き込んでおくことが重要になります。
特に外部の後継者への事業承継を行う場合は、契約に関するリスク分析の重要性がさらに高まります。
弁護士であれば、契約実務の観点から、多角的に事業承継のリスクを分析できます。
事業承継を円滑に行うために、紛争処理に長(た)けた弁護士の知見を活用してください。 -
(2)株式譲渡契約書を整った形式・内容で締結できる
事業承継の条件について合意したら、その合意内容を正確にかつ明確な文言で契約書に落とし込む必要があります。
しかし、契約書作成に不慣れな業者に対応させると、契約書に下記のような不備が発生するおそれがあります。- 必要な条項や合意したはずの事項が漏れている
- 2通り以上の意味に解釈できる曖昧な文言になっている
法律文書の作成経験も豊富な弁護士に契約書作成を依頼すれば、契約解釈を巡って売り主と買い主の間でトラブルになるリスクを抑えることができるでしょう。
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(3)必要に応じて遺留分対策ができる
身内を後継者として事業承継を行う場合には、「遺留分」の問題に注意しなければいけません。
「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、相続によって承継できる財産の最低保障額を意味します。
事業承継を行うときに、株式譲渡の対価を低く抑えたり、無償で株式を生前贈与したりする場合には、後継者以外の法定相続人が遺留分侵害を主張してトラブルになるおそれがある点に注意が必要となります。
遺留分に関するルールは、民法で詳しく定められているため、法律の専門家である弁護士がもっともよく精通している分野です。
弁護士に相談すれば、株式譲渡の対価を調整する、経営承継円滑化法の特例を活用するなど、状況に合わせて適切な解決策の提案を受けられます。
相続までを見据えた長期的な視点で事業承継を行いたい場合には、ぜひ、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
事業承継に関する相談先としては、弁護士・税理士・会計士などの各種士業のほか、金融機関・商工会議所・M&A仲介会社なども存在します。
そのなかでも、事業承継実行後のトラブルを効果的に防止し、さらに相続まで見据えた長期的な視点でスキームを設計したい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、事業承継をご検討中の方に向けて、さまざまな選択肢のなかからご状況に合わせたプランをご提案いたします。
法律・契約に関するトラブルを防止することに加えて、グループ内税理士との連携により、税務に関するご相談もワンストップでご利用いただくことが可能です。
宮崎県で企業を経営されており、事業承継をトラブルなく円滑に実行したい方は、ベリーベスト法律事務所 宮崎オフィスにまで、お気軽にご相談ください。
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